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坂道を
なんごくの 南の はしの
橋 を 渡ると
右に ゆっくり と
下る 坂道が あって
その坂道の 途中に
私が育った家が あった

家の向かいに
病院 床屋さんとあって

床屋さんの
裏庭の井戸からは
夏になると
冷たいスイカ トマト キュウリが
盥に飛び出して
幼い私を キャキャと おどろかせた
床屋さんのお店の中は
石鹸の匂いと 鏡のかすかな光が 反射して
日向の中で 少し時が歪んで
ゆっくりと 動いてた記憶が あります

病院の壁は白 先生も看護婦さんの洋服も白
白黒テレビは いつも 相撲中継
私より ひとつ年下の病院の息子さんは
白いノートに 黒い鉛筆で
お相撲さんの 名前を 漢字で書いて
いつも 教えてくれたのですが
病院の 白い壁に
立てかけられた金盥
白とグレーの風景に
私は 見入ってました

家の右隣は お米屋さん
広いたたきの奥に
ジャングルの様な庭があって
緑の木や草花に いつも おおわれ
その庭で 時々
私はそこのお姉さんに 頂いたハーモニカを
大きな盥の上にのり
滅茶苦茶 吹いて
ターザンを チーターを呼んだりしました

その頃の 私の家は
洋服屋を してまして
木の床には 型紙や 生地のはぎれが
パズル式に 落ちてたりしました
母が結核で 入院してたので
姉やさんが 家にいて
大きな盥で 毎朝洗濯を してました

秋の大台風が やって来ると
よく川の 水があふれ
近所の人たちは
避難所に 避難するのに
各家の 盥をだし
坂道を盥に乗って
ドンブラコ ドンブラコ と
下ったものでした

そんな記憶が 私には あります

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絵画・版画
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