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 眩い光が視界に飛び込んできたので、少年は目を覆って、小さく叫んだ。次に瞼を開けると、ビジョンは轟々と炎舞う森ではなく、黄金たなびく花の雲の下にいたのだ。少年は一瞬、自分はもう死んだのかと思った。背中に負っていたやけどは消え失せ、打撲の跡もない。一歩踏み出してみれば、足取りは軽く、痛みもなかった。だが、母の姿が何処にも見あたらない。おろおろと探してみたものの、見あたらない。少年の周りには、大樹と銀灰色(ぎんかいしょく)の木漏れ日と、小鳥の歌声が響くだけだ。周りを見渡せば、上方は透き通った群青の空。下方は朝焼けが近い事を示す黄金色。そして、大樹から燦々と輝く命の帯が放出されていた。だが、大樹の根本にくい込んだ枷で、少年は初めて気がついた。母はあのとき、全身全霊の力を使い果たして大樹へとその姿を変えたのだ。少年は助かったのと同時に、寂寞の念にとられた。母は、その身を犠牲にして少年を救ったのだ。少年はもう一度、母の名を呼んだ。呼んで、呼んで、呼んで、叫んだ。だが、母が帰ってくる事は、もう、なかったのだ。

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  • 山岸光夫

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