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冬眠への意志、という言葉がある。哲学者ニーチェがその自伝「この人を見よ」で言及した概念である。以下にその一節を引用する。

この人を見よ(岩波文庫 手塚富雄訳)
P31
このことにたいして、病人は、ただ一つだけ立派な治療法をもっている。
わたしはそれをロシア的運命主義と呼ぶ。
ロシア兵が行軍に耐えられなくなると、ついには雪中に身を横たえるあの無抵抗の運命主義である。もうなにも受け付けず、引き受けず、受け入れない、およそもう反応をしないのである…..
この運命主義は、かならずしも単に死への勇気を意味するばかりではない。
そこにひそむ偉大な理性は、生命にとってきわめて危険な状態の中でその生命の維持をはかるものであり、新陳代謝の切り下げ、その緩慢化、一種の冬眠への意志なのである。


極限状態において、動物は冬眠、仮死状態、すなわち死に近づくことによって代謝を抑え、エネルギーの保存を図り、その危機を生き延びようとする。それと同様な本能が人間にもあると、ニーチェは言う。

理性的を意味する、アポロン的なもの。それと対立する、激情的、陶酔性を意味するディオニュソス的なものに示される人間の本能。「冬眠状態」に示される、極限状態において、アポロン的判断はその意味を失い、ディオニュソス的陶酔によってのみ、生命の維持を図ることが可能になる。

冬眠状態における人間の陶酔性を再考する。

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