多くの芸術家にとっての創作活動は、他者との出会いによる自己表現に始まるものでしょう。世界と向き合う中で、自分という存在の意味を真摯に見つめ問うことを、絵画や彫刻という表現手段に求めることで、近代以降の画家や彫刻家は生まれてきたといえるでしょう。人生においてもっとも多感でナイーヴな十代の最終章、二十歳という象徴的な時期は、多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点にも位置づけられます。この時期、未熟と成熟とが葛藤しつつ、世界との関係の中で客観的な自己の形を作り始めるのです。村山槐多や関根正二のような典型的な夭折の画家はもとより、長い活動に生きた芸術家たちもまた、この時期の作品にその創作の核となる初々しくも痛切な感性のほとばしりを見ることができます。本展覧会では油彩画に焦点をしぼり、明治から現代までの画家たちの二十歳前後の作品を集め、その創作の原点を探ります。そこにはそれぞれの時代における精神の違いと、時代を超えた共通性がみられることでしょう。各時代の青春期の作品を一堂にならべることにより、別個に語られ勝ちな近代と現代の美術を同一の地平で考える機会ともなるはずです。さらに、世代の異なる画家たちが青春期に描いた作品群は、現代の若い世代へのなんらかのメッセージとなるに違いありません。

【構成〈出品画家〉】
黒田清輝、熊谷守一、坂本繁二郎、青木繁、萬鉄五郎、中村彜、安井曾太郎、梅原龍三郎、岸田劉生、藤森静雄、恩地孝四郎、田中恭吉、牧島如鳩、中川一政、木村荘八、林倭衛、河野通勢、村山槐多、佐伯祐三、関根正二、尾形亀之助、柳瀬正夢、猪熊弦一郎、三岸好太郎、海老原喜之助、長谷川潾二郎、吉原治良、三岸節子、靉光、筧忠治、桜井浜江、佐藤哲三、藤牧義夫、オノサト・トシノブ、松本竣介、桂ゆき、加藤太郎、野見山暁治、鴨井玲、草間彌生、靉嘔、池田満寿夫、横尾忠則、神田日勝、難波田史男、高畑正、森村泰昌、大竹伸朗、O JUN、野村昭嘉、会田誠、山口晃、石田徹也（53作家、約110点）。

【関連催事】
■ギャラリートーク（学芸員による展示解説）
6月26日（日）、7月3日（日）、7月9日（土）、7月23日（土）
いずれも午後2時～3時、展覧会会場にて（観覧券が必要です）

■美術講座
「大正期の画家たち（仮題）」
7月10日（日）午後2時～3時　１階講堂・聴講無料
講師：濱本 聰（下関市立美術館館長）


【主催】
下関市立美術館、読売新聞社、KRY山口放送、美術館連絡協議会

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