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フォトをベースに新たなイメージとして作り上げられたモノクローム絵画の新作によって構成された展覧会となります。

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ニール・ホッド「Echo of Memories」

芸術は包摂と排除のネットワークを構築、あるいは修正する可能性を持ち、一時的にではあったとしても社会的なフィールドを再構築する能力を有しています。これはフランスの哲学者、ジャック・ランシエール(Jacques Rancière 1940-)が「感覚的なものの分割=共有」と表現したものにあたります。また、1998年にニコラ・ブリオー(Nicolas Bourriaud,  1965年)が『Relational Aesthetics (関係性の美学)』を発表して以降、社会的関係を美学的背景とする芸術が注目されるようになりましたが、『Relational Aesthetics (関係性の美学)』において忘れてはならないのは、ブリオーが参加型のアーティストについての実践に重点を置いているにもかかわらず「これが伝統的なオブジェクトワークを敬遠するものでもない」と語り、さらには鑑賞者と芸術との関係を「より良い方法で世界に生きる術を学ぶことに関する芸術的実践である」と説明している点にあります。

本タイトルにも示された「エコー(Echo)」は、古代ギリシアにおいて、山や谷に向かって発した音の反響を木の妖精であるエーコーが返事したものだと考えたことから、それを「エーコー」と呼んでいたことに由来します。同様に日本においても「こだま」は「木霊」と表記され、樹木に宿る精霊を意味します。洋の東西を問わず、人々はこの音が反響し、響く現象に精霊の仕業といったような神秘的な想像力を働かせていたと言えるでしょう。

ホッドの作り出すクローム絵画はその鏡面性をもった表面特性から、環境や鑑賞者を絵画の世界に取り込みながら、揺らぎ変化をつづけ、終わりのない反響の中に思考を連れ込みます。抽象画を描くかの様に、黒やグレー、青、緑、そしてクロームを塗布されたキャンバスは、さらにホッド自身の思い描いたナラティブを実現させるためにアンモニア、ガソリン、さまざまな酸といった化合物が加えられ、その化学反応によって色彩層が劣化させられます。最終的に色彩は部分的に剥がされ、この破壊的行為の中からホッドはクロームの光の輝きをすくい上げます。これは破壊と創造というアンチノミー(二律背反)のパラドックスの中から光明を生み出すものであり、ホッドの絵画に神秘的な力をもたらします。作品の鏡面性は鏡のような輝きを持ちながらも、鏡と同様には世界と関わりません。複雑な鏡面は世界を完全にはリフレクトさせず、まさに減衰するエコーのように世界を抽象化させます。それは現実の裂け目であり、パラレル・リアリティへの入口となるのです。クローム絵画を前に鑑賞者は不確かな自身の姿を儚くも美しいナラティブの登場人物に置き換えることが出来る。この絵画は鑑賞者が前に立つことで機能する記憶と響き合う装置となり、破壊された場所に新しいナラティブを生み出すように鑑賞者を誘うのです。
一方で、世界には正面から向き合うことすら困難であると感じる出来事に溢れており、私たち人類はいくつもの忘れがたい記憶を歴史の中に共有しています。
どこか古い写真のもろさを感じさせるモノクロームの絵画にはファウンドフォトによって見つけられた、死や破壊、醜さ、悲しみといった世界に溢れるタブーとされるようなイメージが描かれています。ホッドはそこに創造や美しさ、喜びという(二律背反する)アンチノミーな概念を同居させることで、イメージは清濁併せ持った状態となります。アートは悲しい記憶のエコーを包み込む洞窟となり、死と美の概念の間で響き合わせます。そして、そのエコーの中から人々が想像力によってネガティブな歴史を美しいナラティブとして新たな歴史的なコードを再創造する可能性の扉を開くのです。

本展覧会においてホッドは、記憶、光と反射、喪失とトラウマ、破壊と再生、そしてそれらが生み出す人の想像力といった概念へのあくなき探求を、絵画というオブジェクトワークの枠を超えて示します。ホッドはアートによって事実ではなく、美を語ります。しかし、それはある種の真実でもあるのです。ぜひご高覧ください。

開催日 2022年07月09日~2022年08月27日
会場 KOTARO NUKAGA(六本木)
会場住所 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F 地図
地域 東京 / 港区・文京区(六本木など)
営業時間 11:00-18:00 (火-土) ※日月祝休廊
イベントURL https://kotaronukaga.com/
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
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