原作：恩田陸（「夏の名残りの薔薇」文春文庫刊）　　
構成・演出：谷省吾
2015年秋、いるかHotelさんが私の小説『中庭の出来事』を舞台化してくれた時、実際に劇場に足を運ぶまで私は半信半疑だった。
これまでも、私の小説はしばしば「舞台っぽい」と言われてきた。そのせいか、例えば『木曜組曲』はいるかHotelさんをはじめ、異なる劇団で三回ほど舞台化されている。とある洋館という閉鎖空間で複数の女性の会話によって進行する話であり、過去と現在を行き来するところはあるものの、舞台化しやすかったというのは頷ける。しかし、その一方で私は気づいていた――確かに、私の小説は「舞台っぽく」はあるものの、しょせんは「小説」である。「演劇っぽい小説」と「演劇」とのあいだには、やはり浅いようで深い溝があり、何かが決定的に異なるな、と。

『中庭の出来事』は、複数の劇中劇が含まれており、意識的に演劇的な枠組みを用いて書いた小説だ。外から見れば私の小説の中で最も「演劇っぽく」見える小説であろうが、私の中では、これは演劇の姿を借りているもののあくまで小説でしかできない話であり、舞台にするのは無理だろう、と思っていたのである。あまりにも複雑な構造かつ長い話なので（今はもうこんな面倒臭い話、書けない）、作者すら結末を忘れていたほどで、二時間に収めるのも難しい。なので、舞台化されると聞いた時、これまでなんとか「演劇っぽい話なので舞台化できた」ように見えた私の小説が、実は全く演劇的ではないことを露呈するのではないか、と危惧していたのだ。ところが、舞台化された『中庭の出来事』を観てとても驚いた。重層的な内容が過不足なく見事にまとめられているだけでなく、ちゃんと一本の「お芝居」になっていたからである。そこでようやく「なるほど」と納得した。私が演劇という形式に憧れ、そこに託してその向こう側にある小説を見ていたように、演劇人は『中庭の出来事』を小説として読み、その向こう側に芝居を見ているのだ。そしてそれを実際にビジュアル化することが舞台化なのだ、と。

というわけで、今回『夏の名残りの薔薇』の舞台化が決まって、素直にわくわくしている。『夏の名残りの薔薇』もホテルという閉鎖空間で展開する話で、見た目はやはり「舞台っぽい」。しかし、これまた小説でしかできない、実にややこしい構造を持つ話なのだ。
谷省吾といるかHotelの皆さんが、この小説の向こう側にどんな「お芝居」を見ているのか、今は興味津々なのである。　恩田陸

【出演】
岸原香恵
仲村綾美
永井望
　・
魔瑠（遊気舎）
萬谷真之（劇団ヴィジュアル系バンド）
笠井隆介（PEOPLE PURPLE）
山本誠大
手塚裕美
岡本牧子（劇団伽羅倶梨）
　・
関秀人
日時：2017年
3/24(金)19:00
3/25(土)14:00 /18:00　　　
3/26(日)14:00
※受付は開演の45分前、開場は開演の30分前

場所：KAVCホール
料金：
前売一般 3,300円　当日一般 3,500円　学生（前売・当日共／要証明書） 2,500円
※全席指定
※未就学時の入場はご遠慮ください

チケット取扱：
ローソンチケット　0570-084-005〔Lコード＝54901〕　http://l-tike.com/
いるかHotelホームページ　http://irukahtl.web.fc2.com/
神戸アートビレッジセンター　078-512-5500


【スタッフ】
舞台監督：永易健介
照明：森田智子
音響：八木進
舞台美術：渡辺舞
宣伝美術・女体画・写真：東學
音響助手：森健人
劇団員：北村美和
制作：宮崎由美、岸原香恵
制作協力：スタッフステーション
制作総指揮：村守春樹
協力：188、劇団伽羅倶梨、劇団ヴィジュアル系バンド、劇団ひまわり、Jelly Beans、baghdad café、PEOPLE PURPLE、遊気舎、ライダーズ・カンパニー

企画協力：文藝春秋

共催：神戸アートビレッジセンター（指定管理者：大阪ガスビジネスクリエイト株式会社）
主催：いるかHotel
お問い合わせ：
078-512-5500（KAVC）
06-6372-7300（スタッフステーション）

※イベント詳細
http://kavc.or.jp/play/iruka2017.html

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