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F3展
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 作家と作品とギャラリーと鑑賞者との豊かな関係。それは、展示場所が個性的であればあるほど、はっきりと感じられる。場の持つ求心力、その渦の中で揺さぶられた感性は、作家、そして彼らが作る作品に変化を与え、それを観る鑑賞者にも特別な感情―ここでしか実現しえなかったものをを観たという興奮ーを抱かせる。F3展は、実際にこの体験ができる展覧会だ。


 1階で行われている「金子絵美+石橋百合香」の展示は、2人展の魅力を打ち出したものとなっている。2人は、全く異なった個性を燃やしながら、それぞれ油絵を4点展示している。
 金子絵美は、どっしりとした質量が感じられる油絵を描く。木の幹と根元にクローズアップし、それを画面の中心に据えた《居場所がある》は、幹の重量感と不動性が、タイトル通り「居場所」を創り出している。また虹色の羽を鮮烈に輝かせた2匹のオウムを背面から描いた《日常》では、片方のオウムは目を開き、もう片方はそれを伏せ、人間のような表情で佇んでいる。サルを描いた《発見》も含め、金子絵美は、密林の中に立ち上がる濃密な一瞬を、精神世界との狭間で描いている。
 一方、石橋百合香は「かわいいの奥にある、かわいそうを感じる独特な女子世界を表現する」と自身でも語るように「女子」の危うげな二面性を描く。彼女が描く「女子」は口を持たない。その代わり、まつげが強調された大きな目が、水平に断ち切られた前髪の下から覗き、それを支える身体は、円や線の集合によって形作られている。その装飾的かつ平面的な描写が、幻想的な雰囲気を盛り上げる。そして、全ての作品で用いられている蛍光ピンクの塗料が、作品間の共通媒介として、独自の世界観を構築している。実存としての自分と、精神的イメージとしての自分が、交互に現れるかのように、対比して展示されることで「女子」の深みが見えてくる。
 このように、それぞれに強烈な個性を持った2人は、このF3展の説明会で初めて出会ったと言う。とはいえ、中学時代の予備校も、高校も大学も、画材も同じで、ずっと隣を歩いて来たようなものだった。ただ、出会うきっかけがなかったのだ。その2人が、お互いを理解し合うための手段として描いたのが《face》だ。互いの個性を一度自分の中に取り込んで消化し、改めて表現することを試みたこの作品は、着座した女性と、寄り添う黒猫という同一のテーマをそれぞれが描くというものだった。金子は荒々しいタッチと色彩でプリミティブな女性像を提示し、石橋は輪郭線の中に丸や線で構成された独特の記号を転がして「女子」の姿を見せた。
 この展示では、それぞれの作家が持つ鮮やかな個性を知った上で、それらがぶつかり合う瞬間に立ちあうことができる。


 次に、狭い階段を抜けて地下に向かうと、そこには栗原広佑がインスタレーションで表現した世界が広がっている。白壁に白い不織布を張った空間が彼のフィールドだ。日常に溢れるものが、その固有のスケールを崩すと、私たちは困惑する。と同時に、少し気持ちが高ぶる、という体験を展示している。
 《a boxed landscape》と題された絵は、彼の世界の設計図だ。指先ほどの小人から日常を営むサイズの人間まで、様々な大きさの人間が共存する世界に、人間よりも大きな動物や、日用品があわせて描かれている。そして栗原は、この適切なスケールを失った奇妙な世界をインスタレーションで再現する。床に置かれた机の上には、パソコン、本、ペン、ライター、皿、グラスといった日用品が並び、そこに小人が配置され、全てが白塗りになっている。また、白い不織布で作った様々な型の洋服が壁に吊るされている。これらは皆、絵の中で見た世界だ。ただし、一緒に飾られた緑の植物と土に残った足跡は、白の世界から逸脱している。この無機質な物体と自然の生命力の対比もまた、スケールが横転した世界を、そしてその間にできた歪みをよく表している。
 展示場所がカフェの地下であることから、水道の音や、足音が響く。その環境音もまた、このインスタレーションに特別な表情を与えている。この地下での展示は、作品のコンセプトと、展示場所の個性が共鳴しあうおもしろさも体感することができる。



レビュアー:haruka

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