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活動日記
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吉田孝行
ある日のアルテ
前橋映像祭
群馬県前橋市
アルテピアッツァ美唄
上映会
映像祭
彫刻公園
ドキュメンタリー
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2024年1月13日(土)〜1月14日(日)に群馬県前橋市で開催される前橋映像祭2024で、拙作『ある日のアルテ』が上映されます。前橋映像祭には、2017年、2018年、2020年、2023年に続いて5回目の参加となります。

拙作『ある日のアルテ』は、1月13日(土)16時00分開始のプログラム1で上映されます。今年も前橋市にお伺いし、上映後のアーティストトークに参加致します。どうぞよろしくお願い致します。
https://note.com/yoshidafilms/n/n3f6e2c45503b
https://maebashimediafestival.jp/
https://maebashimediafestival.jp/2024program/

『ある日のアルテ』(2022年/14分/HD/16:9/カラー)
かつて炭鉱で栄えた町の山の中にある閉校となった小学校の木造校舎。その一部は近年まで地元の幼稚園として利用されていた。この町で生まれ育った彫刻家を中心に閉校となった学校施設を芸術広場として再生する取り組みが行なわれている。自然と人と彫刻が融合した安らぎの空間。広場にある水路や池で水遊びをして過ごす子ども達のある夏の一日。

レトロな館が佇む、都会のなかにある庭園と思しき場所に、大きな石のモニュメントが横たわる。画面の右奥から子供たちとその引率者の大人が少しずつ姿を現し、ひとりの子供がモニュメントによじ登る。これは『タッチストーン』の冒頭場面であるが、このショットに特徴的にみられるように、静かに風景を凝視し、そのなかの微細な運動を捉える厳密なショット構成は、ジェームス・ベニングの映画を想起させる。しかし、ベニングの映画では、人間と自然環境の間の、和解しがたい緊張関係が提示されるのに対して、吉田の映画では、人間と自然環境との共存が示唆されるのである。緑豊かな公園で、巨大なトランポリンで遊びに興じる子供たちの姿を映した『ぽんぽこマウンテン』は、飛び跳ねることと寝転ぶことといった静と動の活動の喜びが、静止画像と動画像の交錯により表現される。ここでは、遊具を介して、子供たちが全身の感覚をもって、外に広がる世界と関わる様子が描き出されるのである。このことは、安田侃のモニュメントを介して、石の触感を全身で感じ取ろうとする子供の動作をとらえた『タッチストーン』にも引き継がれていく。そして、『ある日のアルテ』では、広大な芝生に点在する、やはり安田侃の彫刻を介して、水や石の質感に触れる子供たちの様子が映されるのである。事物を介して、みずからを取り巻く自然の一部を触知しようとする一連の行動は、カメラを介して、身の回りの風景を再発見させる映画の可能性と繋がるといえるだろう。彫刻と映画は、人間と自然環境の間を取り結ぶ役割を担っているのである。そして、この三作品に共通して流れているのが、子供の時間であることも特筆に値する。それは、誰しもが経験したことのある、ひたすら無為でありながら、「いま」に満たされた充実した時間である。ただ、そこにいるだけでいい。または、『ある日のアルテ』の終盤のシークエンスのように、そこからいなくなったって構わない。この点において、吉田の映画は、一見何も起こらない風景のなかに持続的な美を見出すという、映画の原初的な輝きを呼び起こすものでもあるのだ。———東志保(映画研究者・大阪大学准教授)

【吉田孝行プロフィール】
1972年生まれ。映画美学校で学び、東京フィルメックスで働く。映画とアートの境界を問い直す実験的な映像作品を制作、これまでウクライナとパレスチナを含む世界30か国以上の映画祭や展覧会で作品を発表している。近作に『ぽんぽこマウンテン』(2016)、『タッチストーン』(2017)、『ある日のアルテ』(2022)、『ある日のモエレ』(2022)など。アジア各地の映像作家がコロナ禍の日々をテーマに撮り下ろしたオムニバス映画『エイジ・オブ・ブライト』(2021)に参加。共著に『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(森話社 2016)、『躍動する東南アジア映画』(論創社 2019)など。『ユリイカ臨時増刊号 総特集ジャン=リュック・ゴダール』(青土社 2023)などに寄稿。

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